喫茶店徘徊
学生の頃、街を歩くと、喫茶店の看板をあちこちで見かけた。最近はスターバックスやドトールコーヒーとかのチェーン店ばかり。友人と、「ちょっと立ち寄ってみるか」と膝突き合わせる街の喫茶店は、殆んど姿を消してしまった。と、勝手に思い込んでいた。
ところが実態はそうでもない。そこでお付き合い下さい。ただいま日々、馴染みの喫茶店を訪れるお話に...
数年前から街歩きにいそしむ。ブログ散策記用に、メモ用紙とボールペンを欠かさない。「これ、描けそうだな」、ときおり頭に浮かぶ。「忘れないうちメモしよう、どこか気軽に立ち寄れるところないかな」、と徘徊する。
「あった! 」 あるとき眼にとまったのが、ケーキ屋の二階。場所は上野毛界隈。多少恥じらいながら立ち寄ってみる。ゆったり広めのテーブルがいくつか。客はチラホラ。
「しばらくお邪魔していいですか? 」「どうぞ、ごゆっくりお気兼ねなく」
お店の主人らしき知的な雰囲気の女性が、微笑みながら口調も柔らかく応対してくれた。
濃いめのコーヒーを味わう。駅が近いせいか、歩く人たちの姿が目につく。眼下で間近の彼らの足取りや表情に、感じたことをメモする。気がつくと、二時間近くが経過。恰好の休息である。
毎月数回、電車で30分の図書館に通う。人気のある図書館で、閲覧席はいつも賑っている。午前中に自宅を出る。最寄の駅で下車、しばらく坂道を歩く。するとよくしたもの、一軒の喫茶店に遭遇する。「いらっしゃい」、まるで無言で迎えてくれている。
コーヒーにパン、早めの昼食をとる。周りは、勤め人や主婦たち。昼食時で若干の軽食をとれるためか、多様な人たちが集っている。高齢者の方々も見かける。活き活きとした顔つきで、しばしの会話を楽しんでいる様子である。くつろげる憩いの場なのだ。私は今日半日の図書館の過し方に頭を巡らせる。
友人が経営する事務所が神田にある会社に、毎週一二度顔を出す。昼休み時に、歩いて三分足らずの喫茶店をしばしば利用する。カウンターあり、テーブル席あり。勤め人が多い。私は読みかけの本の頁をめくりながら、コーヒーを少し時間をかけて飲む。少し高めの椅子の座り心地よさに、いつしかある歌詞とメロデイーが心に浮んでくる。
「君とよくこの店に来たものさ 訳もなくお茶を飲み話したよ 学生でにぎやかなこの店の 片隅で聴いていたボブ・デイラン」
神田と言えば学生街、ガロが歌った『学生街の喫茶店』。でも学生たちの姿は見かけない。元学生ばかりである。
とここまで書いて、ふと気がついた。「恰好の休息」「憩いの場」等々の言葉。忙しく立ち回っていた頃の喫茶店のイメージが、まだ頭の中に焼きついているのだろう。
今の私には、そんな場所が必要だろうか、喫茶店へのノスタルジーかな、一度友人を誘って、元学生同士で喫茶店で談論してみるか。
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